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同人、BLに特化テキストブログ。ネタバレ注意! Persona4・3+Talse of the Abbyss (since:09/01/25)
05 . May
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27 . January

俺は愛する事を知らない。
今まで、誰かに恋愛感情というやつに惹かれる事は無かった。
物に執着する事も無い。
冷酷非道。
俺の為に存在するような言葉。
だが、それがどうした。そんな事はどうでも良い。
生きていく上で必要性など感じない。むしろ邪魔なだけだ。

しかし。
伊藤啓太。
コイツが転校して来てから、全てが変わった。
コイツを見てから、言い様のない、不可解な感情が溢れ出て来た。
何をされたわけでもない。ただ普通に話をしただけだ。
オカシイとは思ったが、人にペースを乱されるのは釈然とせず不快。
原因を探る事自体、踊らされているようで。
だから、放って置こうと決めた。

そのはずだったのだが。
人に囲まれて笑っているアイツを見てしまったら、いてもたってもいられなくなった。
そして、無償に腹立たしくなっていた。
その時、遅まきながら気づいた。
既にソイツに振り回されていることに。
オカシイ。
自分は何故ここまでコイツに拘るのか。
知りもしない感情を目の前に突き出され。
知りもしない感情に振り回され。
訳も分からず巻き込まれ。
しかし、腹立たしいのは。
こんなにも自分を乱されているのに、「それでもいいか」と譲歩してしまう事。
アイツが傍に居るなら、「それぐらいいいか」と少しでも考えてしまう事。
オカシイ。
こんな予定は無かった。
けれど、此処に。
ここまで考えても不快に思わない自分が居る。 
まったく呆れてしまう。以前の俺は何処にいったのか。


いつものように。
月明かりに照らされたベットの上で、
「 啓太 」
と、隣で寝ている相手の名前を呟いてみれば。
コイツは寝ている筈なのに、幸せそうに微笑む。
それに満足する自分をオカシイと思う俺が居る。
しかしそれと同時に。幸せを感じる俺も居る。
こんな事を考えている事態、十分コイツに参っている。
もうこれ以上考えても、堂々巡りにしかならないだろう。

結局。
どう足掻こうが、オカシイ事には変わらない。
俺をオカシクしたのはお前だ、啓太。
その代償を、一生を懸けて償わせてやる。
愛という感情を、お前は欲しているのだろう?
だが、生憎だな。
愛という生易しい言葉では括れないほどの感情を、お前は俺から引きずり出した。

あと数時間したら、コイツを起こして呟いてやろう。

――ずっと お前を逃がさないからな――

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27 . January


 貴方のせいです 泣くようになったのは
  今までは 滅多なことじゃ涙を流さなかったのに
   貴方に触れるようになってから 直ぐ涙が溢れてしまう
    そのことに 貴方は気づいてますか


ふと、目が覚めた。
月の光がベットを照らしている。今、この部屋にはその明かりしかない。けれど、十分に明るかった。
俺を抱いている中嶋さんの寝顔は、とても綺麗だった。月明かりにもよく映えている。

いつも意地悪で、なかなか自分のことを明かしてくれないこの中嶋さんに、俺は戸惑う事が多い。そして時々、自分さえ見失ってしまう。
そんな時、よく考える事がある。

―― 俺は中嶋さんの何なんだろう? ――

中嶋さんは頭も冴えているし、かっこいい。無敵といっても過言じゃないような気がする。
けれど、俺は何も取り柄がなくて。運が良いというだけでここに居る。

中嶋さんには不釣合いな俺が此処にいる。

そう思ってしまう。そんな時、中嶋さんは何も言わずに抱きしめてくれる。中嶋さんには言ったことは無いけれど、多分分かっているんじゃないかな。俺は嘘が下手だから。中嶋さんの嘘は完璧なのに。

―― 俺、此処にいても良いのかな? ――

とても好きで、俺にとっても掛け替えのない人だけど、中嶋さんの荷物にはなりたくない。
この腕の中は居心地良い。
中嶋さんの体温は体中が騒ぐけど、安心出来る。
声は耳に気持ちよく響く。

―― 俺は貴方に何か返せていますか? ――



そんな事を考えていると、中嶋さんの顔がどんどんぼやけてきた。
また泣いてる俺がいる。どうしてこんなにも泣き虫で女々しいのか。自分でも呆れてしまう。中嶋さんも辟易してるのかな。
溢れた涙をシーツで拭った。
「啓太」
いきなり声が響いて驚いた。そして、その声色が怒りを含んでいることにも。俺、何かしただろうか?
「また泣いているのか?」
また、という言葉が痛くて。余計に涙が出る。どうして止まってくれないのかな。こんなにも迷惑かけているのに。
「何故泣く」
ため息交じりで言われ、ジクリと痛む。
「……」
「話してみろ」
促すように、髪を優しく梳いてくれる。
「俺は、こ、んな…だけど」
声が上ずって途切れ途切れになっている。馬鹿だな俺。
「昔は、こんなに…泣き虫じゃ、無かったんで…すよ?滅多に、泣かなかった…んですよ」
「そうか」
そう言いながらも、髪を梳いてくれる手はとても優しい。言っても良いのかな?
「だけど、……中嶋さんと会ってから、弱くなったんです。自分では今まで強い方だと思っていたのに」
中嶋さんの手に、心が落ち着いてきたのか、声の震えは止まっていた。
「中嶋さんは、俺には勿体無いって。どうして俺なんかが此処にいるんだろうって、そう思うようになって。……馬鹿ですよね、俺」
何を言ったら良いのか分からない。どんな風に言えば伝わるのか分からない。
上ずって、不安定で、自分でも持て余す。
そんな気持ちは今まで感じた事もなかったから、どうすれば良いのかも分からない。
中嶋さんがため息をついた。
「お前はそんなことを考えていたのか。そこまで馬鹿だと思わなかった」
「ごめんなさい、中嶋さん」
謝罪の言葉しか浮かんでこない。
中嶋さんは抱きしめる力を強くして話し始めた。
「今まで、俺はこんな風に抱きしめた事はない。抱きしめようと思ったことも無い。性欲処理にしか考えなかったから、必要性を感じなかった。だが、お前は別だ。……こんなに言ってやってるのに、お前はまだ分からないのか」
そんな風に言われて、俺は嬉しかった。中嶋さんの言葉が心に染みる。 
「中嶋さん…」
滅多に聞けない甘い言葉に、とても嬉しくて。そしてとても幸せで。顔が火照ってしまった。
中嶋さんは反対に渋い顔になった。
「……こんなこと、言うつもりは無かったんだがな」
そうだ。滅多に見せてくれない本心。中嶋さんは不本意極まりなかったのかも。でも、俺にとってはこの上なく大切なものだから、とても嬉しかった。この事は、いつまで経っても忘れることは無いと思う。
「ありがとうございます、中嶋さん」
腕を回してしがみついた。中嶋さんの体温は少し低くて、だけどとても安心できるもの。そう思ったらまた涙。どうしてこんなに泣けるものなのか、自分でも不思議でならない。
「よく泣くな。本当に昔は泣かなかったのか?」
「ホントですよ」
「なら何故泣く?」
「……解りません。ただ、中嶋さんだから」
そう素直に答えると、中嶋さんはいつものように、唇の端を少し上げて笑った。その笑い方はとてもサマになっている。
「なら、いつまでも泣かせてやるよ」
顎を捕らえられ、唇を重ねる。
月光は静かに輝くも、冷たくも優しく照らしていた。


 弱く愚かな存在を 貴方は認めてくれますか?
  何が返せるかは分かりません
   荷物になってしまうかもしれません
    けれど 貴方の為になら
     何だって 出来る自信があるんです
      この不安定な 言い様の無い気持ちを抱えて
 

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